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真夏の悪夢
第2章 慶び

しかし、子供たちもそこで何をしているかは知っている。

「あそこにチンポをはめるんだ」
「どこに?」
「女の股に決まってるだろう」
「おしっこするところにはめれるのか?」
「バカ、別の穴があいているんだよ」

小学校に上がる頃には、ませたガキ大将のこんな「解説」に男の子たちはチンチンを尖らせ、「立った、立った」とふざけあい、女の子たちは「エッチ!」と軽蔑する、そんな会話が、大人たちのいない場所で、日常のように行われていた。

しかし、昭和31年(1956年)5月に成立した売春防止法が昭和33年(1958年)4月1日から完全施行されると、赤線はそれらの建物だけを残し、露と消えてしまった。

施設内で使っていた家具類は格安で売り出され、小枝子の家でも大きなテーブルを購入したが、母親は「汚らしい」と勝手に古道具家に売り払ってしまった。その夜、勤めから帰ってきた父親とひと悶着あったことは、10歳だった小枝子も覚えている。
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