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8月のヒメゴト ~僕と桃香の7日間~
第1章 1日目
僕があの子に会ったのは、2004年の8月。暑い日だった。

僕は流れる汗を拭いながら、アパートの階段を昇っていた。
もう午後6時だというのに、夏の太陽はまだ容赦なく照りつけていた。

なんか、疲れたな…
それは今日、職場でトラブルがあり、その対応に追われたからだ。
僕は34歳、会社では係長だけど、わずかな役職手当てで責任を負わされて、大していい事なんてない。

今日は早く寝よう…
そう考えながら、部屋のドアを開けた時、声がした。
「お兄ちゃん!」
振り返ると、小さな女の子が走り寄ってきた。
知らない子だ。水玉模様の青いワンピースを着て、ピンクのショルダーバッグを下げていた。

女の子は立ち止まり、元気よく挨拶した。
「こんにちは!山下耕平さんですよね?」
「そうだけど…」
「わたし、大橋桃香です」
そう言うと、ペコリとおじぎした。
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