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星逢いの灯台守
第3章 空蝉のひと
…まだ若い駅員が改札口に現れた。
そろそろ下り列車の到着時刻なのだろう。
宮緒はゆっくりと立ち上がり、待合室を出た。

…改札口を抜けると、長閑な駅前の町並みが広がっていた。
夕暮れ時とは言え、人影もまばらでその風景には微かな郷愁すら覚えた。

…この辺りは少しも変わらないな…。
宮緒は小さく微笑んだ。


…宮緒が上海に渡って、五年の月日が流れていた。
上海の新しいホテルが軌道に乗るまで、宮緒は昼夜を問わず仕事に邁進した。
しばらくは、澄佳のことも思い出す暇がなかったほどに…。
やがてホテルの経営も軌道に乗り、業績も黒字を計上できるようになり、宮緒はようやく一息ついた。

それから、幾人かの女性と巡り会った。
華僑の令嬢、上海の富豪の夫人たち…。
中国人、イギリス人、フランス人…。
人種の坩堝の東洋の魔都、上海で…。
華やかな絹のチャイナドレスの女性と、美しいハニーブロンドに空色の瞳の女性と…。
異国情緒に彩られた華やかなラブアフェアや一夜の情事はあったが、恋人はいなかった。
思い出すのはやはり澄佳の美しくも儚げな白い花のような面影であった。

…そんな時、風の便りに澄佳が結婚したと聞いたのだ。









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