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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第10章 甘い微熱と寂しさと



「ちゃんと寝て、いい子で待てた?」


頭上から、子供をあやすような柔らかい声が降ってくる。
その質問にコクリと頷くと、
彼はクスッと微笑みながら私を抱き上げてきた。

いわゆる、だっこされてる状態。

普段なら恥ずかしくて抵抗とかしちゃうんだけど、
たぶん弱ってるからかな。
彼の首に手を回して、素直に受け入れてしまう。


「先輩、とりあえず部屋入るよ?」
「ん。」


彼が私を抱えたまま部屋に入り、玄関を閉める。

……白馬くんの匂い落ち着く。
そういえば私服だし、着替えてきたのかな。


「はい、じゃあベッドにゴロンして。身体辛いでしょ?」


そう言いながら彼がベッドの前にしゃがみ込み、
私を下ろそうとするんだけど。



「?、先輩?」



……困った。
まだこのままでいたい。

身体は確かにだるくて辛いけど、
それ以上に白馬くんから離れたくない。


「……その、もう少しだけこのままじゃダメ…?」
「え?」


白馬くんがキョトンとする。

頭が少し熱にやられてるからかな。
普段よりワガママが言いやすい。

抱えたままだと重いし動き辛いしで、
彼にはデメリットしかないことは分かってるんだけど。


「なんか、寂しいの。」


彼の体温が離れるのが、すごく嫌だから。

彼に抱きついたままでいると、
耳元でフッと小さく笑う声が聞こえた。

彼の大きな手が撫でるように私の髪を梳く。


「わかった。いーよ、好きなだけこのままでいて。
ちゃんとワガママ言えて偉いね。」


……ワガママ言って褒めてくれるの
白馬くんだけだと思う。

先程の、抱いていたぬいぐるみには無い体温。

あったかい。寂しくない。


「先輩、熱は測った?」
「うん、38度。」
「地味に高いな。」


ベッドにもたれかかる形で白馬くんが座り込む。

彼が来て、気持ちが落ち着いたせいかな。
なんか熱っぽさが急に戻ってきた。


「先輩ダメじゃん、具合悪いならちゃんと休まないと。」


……わかってる。
わかってるんだけど……


「ごめんなさい、いけそうだなって思って……。」


昔からの癖で、どうしても無理を効かせてしまう。

子供の頃からずっとそう。
なかなか直らない。


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