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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第10章 甘い微熱と寂しさと


「……あー、先輩ってあれでしょ、下に兄弟いるでしょ?」


白馬くんが何かを察したように聞いてくる。
私の背中を撫でる手が優しい。


「うん、いるよ。シスコンで引きこもりな二十歳の弟が。」
「弟くんキャラが濃いwww」


……あれ、笑ってくれた。

これを言うと、
大体の人はドン引きするか心配するかのどちらかなのに。

うん、やっぱり白馬くんは常識人って感じじゃないね。
もちろん、いい意味で。


「……昔から両親が共働きで、帰りが遅くてね。私が親代わりしてたようなものだから。」


そう。
だから学校も休めないし、
具合が悪くても家事をするのは当たり前。

その当時の癖が、今でもずっと無くならない。


「……なるほどね。先輩が人に甘えられない理由が少し分かったわ。」
「ふふっ、でも白馬くんには甘えられるよ。今みたいに。」


彼の方を向きながら、彼の肩に頭を預けて力なく笑う。

こんなに自分の要望を言うのは初めてだし、
たまにお兄ちゃんが出来たみたいに感じることがある。

彼は基本弟っぽいのに、変な感覚だ。


「偉い偉い、もっと甘えたまえよ。」


そう言いながら彼が私の背中をさする。
ほら、こういうところがお兄ちゃんみたい。

……落ち着く。

おかしいな、
さっき寝たばかりなのにまた眠くなってきた。
身体を起こしてるのもそろそろ辛い。

子供のようにウトウトしていると、
それに気づいた彼が、私を抱えてベッドに寝かせてくれた。


「ほら先輩、無理しないで。眠いならちゃんと寝て?」
「うぅ……。」


白馬くんが私に布団をかけてくれる。
温かいけど、彼の体温が離れてしまって正直寂しい。

明日も仕事あるし、白馬くんは帰っちゃうよね。

早く帰って休んで欲しいのに、
まだ傍にいてほしい矛盾感。


……そういえば、同棲の返事まだ返してない。

断ろうと思ってたけど、一緒に住めば
こういう時もずっと傍にいれるのかな、なんて。


「……ねぇ白馬くん。」
「ん?」


熱で頭がクラクラする。

きっとそのせいだ。
私にしてはおかしすぎる願望が顔を出した。

普段なら多分、恥ずかしくて言えない。


わたしは彼の服の袖を掴みながら、
うわ言のように緩く口を開いた。






「……風邪治ったら、ご褒美にいっぱいキスして……?」








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