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第5章 　漏洩

　「昨今のＴＶでは倫理規定が厳しく、ラブシーンやベッドシーンは完全にご法度。こうした規制こそ緩和し、ゴールデンタイムの茶の間に、お色気番組を投入するとか・・・。
　激しいベッドシーンをいつでも、どこでも、誰でも気軽に鑑賞しできるようにすれば、若者たちの草食化に歯止めが掛かり、ひいては人口の増加につながるものと考えます」
　「それで、具体的に何をどうするんだ？」

　矢部首相がせっかちに質問した。

「性描写自由化法の制定を提案いたします」

「なるほど、それはいい。与党の規制緩和路線とも整合性が取れる。法務省はさっそく性描写自由化法を準備しなさい」

　しかし、立ち上がった法務省・岡野詩音は首を左右に振った。

　「総理、法制化の必要はありません。ご承知のように、わが国憲法第21条第3章は集会の自由・結社の自由・表現の自由、検閲の禁止、通信の秘密について規定しております。
　ですから、マスコミの倫理規定は、業界による自主規制であります。監督官庁から業界幹部に規制の緩和を働きかければそれで済みます」

　「そうだ、表現の自由だ。すっかり憲法を忘れていたよ。さすが、岡野君。さっそく、君の発言に沿って働きかけよう」