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第5章 　漏洩

　「待って下さい矢部首相、性描写自由化に当たって、最も重要な点は、その基準であります。どこまで自由化するか、一定の方向をお示し頂かないと、業界団体も対応に苦慮いたします。ひいては緩和の遅れにも繋がりかねません」

「バカもん。自由化といったら、自由化だ。基準などない。オールフリーでどうだ」

　何ごとにも慎重な岡野詩音が首相発言に最後の念を押した。

　「せめて、あそこにはぼかしを・・・」
　「No, pubic hair !」

　環境省のバイリンガルで奥手の蒼井瑠衣が思わず英語で叫び声をあげた。

　「キュ、キュ、キュウピイヘヤ？　何だねそれは」
　「和製英語ではアンダーヘヤー。･･･い、陰毛です」
　「日本語で言いたまえ」
　「はい。以後気をつけます」

　首相に叱責され、蒼井は二の句を継げず、上げかけた尻を椅子に戻した。
　すると、なぜか、鶴岡猛が蒼井擁護に立ち上がったのだ。

　「矢部首相、いささか乱暴すぎます。お茶の間に陰毛はあまりにも刺激が強すぎます」
　「うーん、肉食系の代表の君がそういうなら、已む終えん。ヘヤー禁止だ」

　そのとき、それまでじっと戦況を見つめていた厚労省・奥原琴葉がおもむろに立ち上がった。