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第5章 　漏洩

　矢部首相の言葉に提案した井上までビックリ仰天。
　
　「総理、お待ち下さい。もし、そのような規制緩和や規制強化の結果、性風俗が乱れ、非嫡子いわゆる婚外子が激増するようなことになったら、どのように対処を」

　厚労省・奥原琴葉はあまりにも無責任と思える矢部首相の考えにふたたび異議を唱えた。

　そのときであった。法務省の岡野詩音が立ち上がったのだ。

　「まさに、問題の本質はそこにあります。すでに十数年まえから、俗に言う『婚外子』が激増しております。しかし、下半身離婚といわれる偽装によって婚外子は表面に現れておりません。
　さらに問題を複雑にしたのは、あの大谷祥太郎君のような選ばれた男性の精子が大量にばら撒かれた出したことであります。これが何を意味するかお分かりでしょうか、総理」

　「君の意見を聞かせてくれたまえ」
　「家族関係、婚姻制度の崩壊。まさに国家の一大事であります」
　「うーん」
　矢部首相は天を仰いだ。
　ふたたび婚姻制度を岡野詩音が持ち出したからだ。
　「まずい」法律に弱い矢部首相はいささかうんざり気味である。
　しかし、婚姻制度を抜きに、問題の解決を見出せないと考える岡野は食い下がった。