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海猫たちの小夜曲
第2章 絶望の始まり ~海色のグラスと小麦色の少女①~
「……ね、実は、先生にも散々聞いたんだけどさ、ダイビングって楽しい? わたし、前から先生によくダイビングの話、聞かされてて、結構、興味があってさ。」
少しだけ間をおいて、高瀬さんがあたしの顔を覗くようにして聞いてきた。
「うん! すっごく楽しいよ!」
「あー、そこだけ即答! それ、先生の答えと同じだよ、もー。」
高瀬さんがあたしの肩をたたいて笑い、あたしもつられて笑った。
それはこの最低の5月のなかで、あたしが唯一、心から笑えた時間だった。
港へと続く帰り道が、あたしの家の前の角に差しかかり、高瀬さんは、あたしの方を振り向いて微笑んだ。
「……ね、これからは高瀬さん、じゃなくて、遥、でいいからね。」
「じゃあ、あたしも有坂さん、じゃなくて、望海、で。」
あたしたちは、その日の最後にそう言って、別れた。
そして、あたしは先生にもらった琉球ガラスのグラスを、ベッドの棚に飾った。
その日から、あたしは寝る前に、その海色のグラスを見るのが、新しい日課になった。
少しだけ間をおいて、高瀬さんがあたしの顔を覗くようにして聞いてきた。
「うん! すっごく楽しいよ!」
「あー、そこだけ即答! それ、先生の答えと同じだよ、もー。」
高瀬さんがあたしの肩をたたいて笑い、あたしもつられて笑った。
それはこの最低の5月のなかで、あたしが唯一、心から笑えた時間だった。
港へと続く帰り道が、あたしの家の前の角に差しかかり、高瀬さんは、あたしの方を振り向いて微笑んだ。
「……ね、これからは高瀬さん、じゃなくて、遥、でいいからね。」
「じゃあ、あたしも有坂さん、じゃなくて、望海、で。」
あたしたちは、その日の最後にそう言って、別れた。
そして、あたしは先生にもらった琉球ガラスのグラスを、ベッドの棚に飾った。
その日から、あたしは寝る前に、その海色のグラスを見るのが、新しい日課になった。