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はなむぐり
第10章 花潜り
予報通り快晴で、今の時期にしては暖かく、洗濯日和となった。6時から洗濯機を回していて、ベランダにどんどん敷き布団のカバーや私の服を干していく。下着類はハンガーにかけてリビングのカーテンレールに干し、蜜樹のタートルネックのセーターのワンピースは先ほど、近所のクリーニング店に預けてきた。
兄の花の水を取り替えて手を合わせ、一日の無事を祈る。
一通り終わったところで、昨夜のシチューを温めながら食パンをトースターで焼く。寝室を覗くと、蜜樹は布団にくるまってすやすやと眠っている。
いつもは私より早く起きて用意をしてくれるが、これからは蜜樹が休める日を一日でも多くと思っている。台所に戻り、きつね色に焼けた食パンを皿に載せて、シチューをマグカップに注いだ。牛乳がたっぷり入ったカフェオレも作り、寝室に運んだ。起こす前に先にカーテンを開けると、蜜樹はもぞもぞと動き出し、寝ぼけまなこで私を見つめる。
「おはよう。眠れたかな」
「うん…智さん…全部やってくれたの?」
気だるい身体を引きずるように起き上がり、敷き布団の横に置かれた朝食をぼんやりと見つめている。
「気にしなくていい。いつもやってくれているんだから。今日は日曜日だし、ゆっくりしなさい。蜜樹が作ってくれたシチューを温めてパンを焼いただけだよ。一緒に食べよう」
蜜樹の隣に腰を下ろして肩を抱き寄せると、素直に頷いて目を瞑った。
「ありがとう…すごく幸せ。毎日、智さんが幸せにしてくれる」
そう言うとゆっくりと目を開けた。
綺麗な両目に吸い寄せられて、すくい上げるように深く口づけた。