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もしも勇者がラスボスと子作りをしてしまったら。
第2章 僕は勇者です。
豪快なのかオープンに変態なのかもわからず、ただただ僕は苦笑いを浮かべるしかなかった。

これ以上長居しても迷惑をかける……

というより自分が迷惑を被りそうなので、「本日はありがとうございました」と営業マンさながらの丁寧さでお辞儀をすると、そのまま逃げるように道具屋から飛び出した。

すると僕がこの町に訪れていると知られていたようで、店の前には大名行列がごとく、人だかりができていた。

「きゃー勇者様! こっち向いてー!」
 
いたるところで若い女性の方々の黄色い声が上がっている。

思わずそんな期待に応えたくなる衝動をぐっと我慢しながら、僕は足早に町の出口へと向かっていく。

「あっ! 勇者様だわ!」

「勇者さま、是非とも私の店に!」

「勇者さまぁ! サインちょーだい!」
 
花道のように出口までの一直線の道を、町の人たちが取り囲んでいた。

この世界で勇者となれば、元の世界で例えると国民的アイドルグループのリーダーよりも影響力があるようで、どこの街や村に行っても同じような感じなのだ。

最初こそ喜んでいた時もあったけれど、そんな喜びはすぐに疲労へと変わっていった。

それに、みなを騙しているある『事実』があることも、心の疲れに影響しているのかもしれない。
 
そんなことを考えながらやっとの思いで出口を抜けた僕は、目の前の大きな木の下で大人しく待っている相棒へと近づく。

この世界ではもちろん車や電車なんてない。

移動手段はいうだって、馬だ。

僕はともに幾千もの戦いを切り抜けてきた相棒の背中に跨ると、手綱で合図を送り走り始める。

後ろからは相変わらずきゃーきゃーと黄色い声が飛び交っていて、チラリと振り返って挨拶代わりに右手を軽く上げた。

……しまった、群衆の先頭にいた若い女の子が、喜びのあまり失神
してしまったようだ。

「大変申し訳ございません……」

営業中にクレームを起こしてしまった時のように、僕は誠意を込めて謝罪の言葉を呟くと、もう一度手綱で合図を送って、家路までの道を急いだ。
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