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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第8章 営業マンは受付嬢が好み

朝の聖様騒ぎ以降、何事もない日々が続いている。
……そう、あの一夜が無かったかのような平穏。
実感が淡い私にすればホッとはしているの。聖様も話かけることもなく、ましてや巽さんと会うこともない。なんとなく戻った普通の日々。

ああ! 一つだけ違うことが、あるにはあったよ。
それは三科さんが受付に寄るようになったこと。
営業だもの、仕事的には社内社外問わずでしょう、これがちょくちょく正面を通るのよ。……そのたびに。

「今日は何回だと思う朝陽?」
「うーん、3回だと思うわ」
「アポは1件。残りは外回り?」
「そうそう。出張でも行ってくれないかなぁ……」

出入りの少ない午後の一時、こうして三科さんの通過回数を当て合うのがクセになってしまったの。
私も朝陽も、三科さんに興味がないから余計にかな?

「いい加減ウザいって言ってもいいかしら?」
「それは流石に……。
営業のルーキーなんだから、言えば朝陽が危ないよ」
「蹴散らすわ」
「まぁまぁ……」

三科さんのせいで、エントランスは厳戒体制……特に朝陽がだけど。
嫌なのに話しかけられるのは辛いのも解る。……そう、少し前の私のように。
対して私は……巽さんのお陰で心に余裕が出来た。
三科さんに近寄られても、前よりは我慢できるようになり、応対は私がやることが多くなったの。

『じゃあ任せるわ』が、朝陽の言い分。どれだけ嫌なのよ。飲んでる時は気楽に話していたくせに。

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