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裏切りの幼なじみ
第10章 愛しいから、縛りたい
「我ながらいい出来だな……」

仕上がり具合にようやく納得がいった。

見下ろす視線の先には、乳房が歪むほどに上半身を縛られ、女裂にも縄を食い込ませた女が仰向けに寝ている。

「すぐに縄を解くのも勿体無いな。このまま片づけるか」

人間の女ではない。人形だ。

椅子の上に立ち、背伸びをしてやっと届く天井扉。布に包んだラブドールをしまうと少し位置をずらし、小型ノートPCの箱を隠し入れ、扉を閉めた。

(たぶん奈津子は知らない。箱の中身はもちろん、ラブドールのことも)

ノートPCの箱にはスケッチブックが入っている。奈津子の留守中に隠し場所を探すうち、天井扉を見つけた。初めて開けた時、あの〝人形〟の顔が覗いて身が凍った。

奈津子の亡くなった夫が生前、密かに納めたのだろう、と隆志は推察した。

「練習し過ぎて手首と指が痛い……緊縛をマスターできたのは、あのラブドールのおかげだな……」

心の中で手を合わせながら脱衣所に向かう。浴室の鏡に裸身を映した。

幾分か嵩が張ったペニスが、ダラリとぶら下がっている。

女医、笹原由梨に委ねた男性器増大整形。もう術後の痛みは和らいだが「こんなものか……」というのが正直な感想だ。

「長さも太さも劇的な変化はない。カリが少しゴツくなったような……由梨の個人的な趣味か?」

すっかり隆志に心酔する女医の顔を浮かべ、ニンマリする。

シャワーを終え、冷たいドリンクで喉を潤しながら、用意された夕食をレンジで加熱する。

(奈津子はどこで何をしている……)

『わたしが働くわ』と確かに言っていた。それでも自分が帰るときには家にいて、笑顔で出迎えてほしい。少年らしい身勝手な想いが募ってしまう。

(そもそも働いているのかさえも怪しい。金はあるはずだろ……)

未亡人とはいえ、有能な美容外科医だった夫はだいぶ残したはず。少しくたびれた美熟女というのも仮の姿で、どこかに豪華な別宅を構えて優雅にやっている可能性だってある。

かつて私設学童を営んでいたこの一室をいまも保っている理由は、察しがつく。美由紀の存在だ。奈津子はきっと娘がここに戻ってくる日を夢見て、古びた部屋を守り続けている……と隆志は推察する。

思慕よりも支配欲がふつふつと煮え立つ。
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