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裏切りの幼なじみ
第2章 癒しのおっぱい先輩
「ねぇ、もしかして別館のひと? 一年生でしょ」

紙コップ入りのオレンジジュースを飲みながら所在なげにしていると、背後から優しげな声を掛けられた。振り返れば、キラキラした派手さを持たない落ち着いた和風顔の女の子が微笑みかけている。

「そ、そうです。すみません」

なぜ謝る必要があるのか。ここ数日ですっかり卑屈になってしまった自分を情けなく思っていると、手首をギュッと掴まれた。

「案内してあげる。ここじゃ落ち着かないわ。あ、わたしはデザイン科二年の白石葉子。よろしくね」

(本館の女子、しかも先輩……)

先日の帰り道、別館の掲示板に貼られたビラに目が止まった。

『新入生大歓迎! 本館・別館合同パーティー開催』

春秋の恒例行事なのだという。早々に躓いたスクールライフを立て直すべく、隆志は参加していた。

「人混みがなくて快適な穴場があるの」

高根の花に手を掴まれ、パーティー広場から連れ出されてしまう。

広いエレベーターに二人きりになってようやく女の手が離れた。掴まれた間に付着した手汗の感触が、すぅ、と染み入る。

ワクワク感を楽しむはずが、胸を鷲づかみにされたように苦しい。あの日以来、軽い女性恐怖症を患っている気がする。動き出した密室空間で葉子がいきなり顔を寄せてきた。

(まさか、キスを?)

ドキリとした。

「色んな噂があるみたいだけど、気にしないでね。堂々としていていいのよ」

耳元を生温かい湿り気が擽る。フルーツ系の飲み物が混じった唾液と甘い吐息の香りがやけに卑猥だ。

「噂って?」

「カーストのことよ。ここは高飛車な女の子も多いけど、萎縮したら負けだわ」

葉子の言葉は気遣いであろうし、ありがたい気もする。けれどこうして実際に言われると、あの噂は実体として存在したのだと逆に意識してしまう。触れないでおいてほしかった。

「でも、本館に来るとドキドキしちゃって。綺麗な女の子が多いし」

「ふふ……確かに別館は男子ばかりで地味だもんねぇ」

エレベーターを降りて通路の突き当たりまで進むと、ステンドグラスが施されたドアを経て、広いリビングのような部屋に案内された。大きな窓から都心の夕暮れが見渡せる、静かでクリアな空間だ。

壁掛け時計の秒針が空調音を弾いて刻む。
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