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蘇州の夜啼鳥
第2章 かりそめの恋
…泣いている…暁蕾が…。

想像するだけで、激しく胸が痛む。
…俺のせいだ。間違いなく…。
彼女を騙していたようなものだ。
…そして、暁蕾に、君が一番好きだと断言してやれなかった。

「シャオレイは貴方が好きなんだそうです。
…あんなに日本人嫌いだったシャオレイが…。
だから、貴方が昔の恋人の身代わりに自分を愛していたことが許せないと…。
当然ですよね。酷い話だ。
だから日本人は嫌いですよ」
吐き捨てるようにまくし立てる。
そうして、苦々しげに片岡を睨みつける。

「…けれど、その何倍も何百倍も貴方が好きなんだそうです。
なぜ貴方なんかを…!
愛人を作り、好き勝手した挙句、自分の妻と愛人が刃傷沙汰を起こした。起こさせたのは貴方だ。
知ってますよ。全部調べましたからね。
全部貴方のせいだ。
そんな貴方を…シャオレイは…愛していると泣くんです。
…自分の父親みたいに愛人を持っていた男を愛してしまったシャオレイの、苦しみと悲しみがわかりますか!?
おまけに自分と瓜二つの愛人の存在を知らされて…!
それなのに貴方は!よくもそんな…冷静でいられるものですね!」

…青年の端正な貌に感情が剥き出しになる。
それは愛ゆえの激しい感情の吐露であった。

暫しの沈黙ののち、穏やかに口を開く。
「…冷静でいられる訳がない。
俺はシャオレイを愛していた。…今も愛している。
…けれど、そんなことを伝える資格がないこともよく分かっているよ。
だからこそ冷静でいなければと思う。
俺のことを早く忘れてもらうために…」
ホテルの一枚硝子の窓から見えるのは、蘇州の近代的なビル群や街並みだ。
…あの牧歌的で懐かしい水辺の風景ではない。

…そう…。
夢は終わったのだ。
一睡の…夢…。
ランタンの月と、夜半に啼いた夜啼き鳥…
甘く痺れるような愛の営み…。
暁蕾の美しい唄声…

…水路を渡る舟の中で、キスをした。
…我愛称…
…愛している…

…暁蕾…。
俺にもう一度、恋する奇跡をくれた美しい娘…。
…けれど…

「…俺のきれいな夢は、終わったんだ…」
雨航は眼を見張った。


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