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蘇州の夜啼鳥
第1章 ランタンの月
「…今日だけですからね。
もしまた強制したら違約金を払っていただきますからね!」
ぶつぶつ文句を言いながら、暁蕾は試着室から出てきた。

「わかった。約束し…」
何気なく見上げて、片岡の眼が釘付けになる。
「…澄佳…!」
片岡は思わず小さく呟いた。
…やはり瓜二つだ…。
あまりに酷似していて、息が止まるほどだ。

「何?」
暁蕾は怪訝そうに眉を上げた。

…かつて澄佳とこの蘇州を訪れた時、片岡はチャイナドレスを着せた。
…濃い蘇芳色のノースリーブのチャイナドレス…。
長い髪は一つのシニヨンに結い上げ、根元に花売り娘から買った赤い薔薇を飾ってやった…。
透き通るような白い肌をした楚々とした美貌の澄佳に、華やかで婀娜めいたチャイナドレスはぞっとするほど良く似合っていた。

…あまりに美しく、愛おしく、ホテルで激しく彼女を求めた。
新品のチャイナドレスはすぐに駄目になった…。

…昔の話だ。
遠い昔の…。

片岡はやや強張る頰に陽気な笑みを浮かべた。

「…とても綺麗だよ。
美しすぎて、そら怖くなるほどだ」
…本当だ。
澄佳と生き写しの美貌に、中国人特有の長い手足、女性らしい円やかな胸の隆起、か細い腰はシェイプされ、美しい曲線を描いている。
「…君はチャイナドレスが良く似合う」
暁蕾は更に怒ったような表情をした。
「日本のおじさんて、これだから嫌い。
中国女にはチャイナドレスって本当に陳腐な発想だわ」
暁蕾にストールを選んでいた女主人が、ずかずかと意見をしにやってくる。
「チャイナドレスは世界一美しいドレスですよ。
女の身体を上品にも優雅にも官能的にも見せることができるのはチャイナドレスだけです。
…なのに今の若い娘たちは古臭いだのなんだの言ってちっとも着ようともしない。
全く、嘆かわしいことですよ!」

片岡はにっこりと笑った。
「さすがはマダムだ。ありがとう。実に素晴らしいドレスだ」

立ち上がり、不機嫌な貌のままの暁蕾に近づく。
「俺は綺麗なものが好きなんだ。
…あんな色気のない服を着た女と食事をする趣味はないんでね」
試着室のカーテンに吊るされた暁蕾の着ていた服…白いシャツに紺のパンツスーツ…を顎で示す。

「はあ?」
暁蕾の怒りが爆発する前に、慇懃に手を差し伸べる。
「では行こうか。次の仕事だ。
…跳ねっ返りの楊貴妃」









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