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さすがに無理やろ
第8章 立ち聞きと待ち伏せ
「ドンドンっ
入るでー」

俺はちょっと大袈裟に壁を叩いて
給湯室に入った

「あ、新飼さん。
お疲れ様です」

「おう、お疲れ」

経理と総務の女の子か…
それも全員青山さんより年下やないか
可愛らしい顔して
イケズなこと話してんなぁ

「お茶ですか?」

「いや、頭痛すんねんけど」

「あ、お薬ですね。
すぐ出しますね!」

「相変わらず優しいなぁ」

「そんなことないですよー」

せやな
そんなことないなぁ

「はい、お水もどうぞ」

「ありがとうな」

俺やのうて
青山さんに
そのくらい気いきかせてやれよ
お前らのせいで
青山さんいっつもクタクタやんけ!

そう言えたら
どんなにええやろ

けど
絶対に言うたらあかんねん

ここで青山さんや水本さんを庇うようなこと言うたら
あの二人はもっと嫌がらせされるんや
せやから…

「あ、せや、山本さん」

「はい」

「忙しいとこ悪いんやけど
昨日出したワークマートンの書類
急ぎになってしもてな
今、青山さんが持ってんねんけど
山本さん仕事早いから
今日中に頼んでもええかな」

ほんまは急ぎやないけどな!

「あ、はい!任せて下さい!」

「悪いなぁ。頼むわ。
それと下谷さんな」

「はい」

「さっき近藤の会議終わったばっかりで
会議室散らかってんの
片付け手伝うてくれへんか?
下谷さんが手伝うてくれたら
近藤喜ぶ思うし」

「了解でーす!」

ほんまは近藤おらへんけどな!
てか
元々お前の仕事やけどな!!!

「ほな、よろしくなー」

「はーい」

あー…くそっ
こんくらいのことしかでけへん自分にも
イラっとしながら俺は給湯室を後にした

会いたい…
青山さんに会いたい

せやのに
残業があるから
今日の約束はキャンセルしたい
と、青山さんから電話がかかってきたのは
それから二時間後のことやった



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