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さすがに無理やろ
第8章 立ち聞きと待ち伏せ

「新飼さん、待っ…」

待つわけがない

戸惑う青山さんをよそに
俺は手を離すことなく歩いたけど
青山さんはやっぱり
酔いがまわってんのか
思うてたほどの抵抗は見せへんかった

「まっすぐでおうてる?」

少し後ろを歩く青山さんの歩幅に合わせながらそう聞くと
青山さんは
一度だけ小さくうなずいた

あかん…
このまま連れ去って
猛烈に看病してやりたい

「具合悪なったら言うてな?」

その質問にも
青山さんは
うなずくだけ

ほんまに大丈夫やろか…
てか
道、おうてんのか?
と、キョロキョロしてると
少し先に小さな公園を見つけた

ちょっと休憩させた方がええな

そう思うた俺は
青山さんに断りを得ることなく公園に入り
そして青山さんをベンチに座るよう促した

「ちょっと休憩していこな」

すると青山さんは
素直にゆっくりと腰を下ろし
空いている方の手で頬を抑えた

「…どうしちゃったんだろ…」

「ごめんな?
酒、すすめすぎた。
酒、強い思うてたから」

俺はそこで…

繋いでいた手を
そっと離した

「ううん…こんなこと珍しくて」

「疲れてたんちゃうか?
隣、ええかな」

「…あ、はい」

青山さんの隣に座ると
バックからハンカチ出し
そのハンカチをギュッと握り締めた

「…すみません…」

「ええって。
そんなん気にせんでええから
ゆっくりしい。
気持ち悪ないか?」

「…はい」

「寒ない?」

「…大丈夫です」

口数は少ないけど
さっきよりは
顔色よさそうやな

「あー…公園なんか来たん
久しぶりやなぁ…
風が気持ちええし月も綺麗や。
なんやホッとするわ…
なぁ青山さん
今日
急な仕事で忙しかったんちゃうか?」

「…まぁ…はい」

「午後から?」

「あ、いえ…
朝から急な案件があるは知ってて
それをやらないといけないかもと
ずっと思ってて…」

え…
給湯室で話してた仕事のこと
青山さんは
朝から気が付いてて
ずっと気にしてたんか?

「だから
新飼さんとのお約束もあったので
朝から自分の仕事を急いで…」

「急いで?」

「昼食をとりませんでした」


ほんまにもう…なにやってんねん
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