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さすがに無理やろ
第8章 立ち聞きと待ち伏せ
その言葉を聞いて
俺は一瞬
青山さんの手をギュッと握りしめてしまった

会社で見る青山さんは
いつも凛としていて
動揺する様子は微塵もない

せやから
その『恥ずかしい』という言葉は
俺の胸を猛烈に熱くさせたんや

こんなにちゃんとしてんのに
いつも
無茶苦茶しっかりしてんのに
今の青山さんは
ごく普通の女の子で…

「恥ずかしい?」

「…はい」

「何が?」

「新飼さんの言葉も
…手を繋ぐことも」

照れてるとこ
見たいからやで?

「…だから」

ん?

「だから?」

「手を離してもいいですか?」

え、嘘やろ!
青山さんはちょっと俯いて
俺とは目を合わせへんまま
そう呟いた

あかんあかん
そんなんあかんに
決まってるやんけ!

「いやや」

「……」

「けどな
気持ち悪いならすぐに離すで?」

そう言うと
青山さんはピタリと立ち止まった

「そういうところ」

「ん?」

「そういうところは…」

「うん」

「ずるいです」

「クスッ。せやな、ズルいよな。
けどな、俺、嫌われたないねん」

「……」

「ほんまは手を離したないけど
それより青山さんに引かれたり
嫌われたないねん。
俺のこと強引に見えるかも知れへんけどな
ほんまはヒビってんねんで?」

「……」

「ごめんごめん。
困らせたないから手え離すな?
ちゃんと歩けてるみたいやから」

そう言って手を離すと
青山さんは
すごくすごく小さな声で呟いた

「ありえない…」

「え?」

「いえ、なんでも。
私が住んでるところは
あの先を右に曲がったところなんです」

「もうすぐやな」

「はい。
グルグルバット楽しみです」

「ほんまかいな」

青山さんは
「ありえない」と言う言葉を
誤魔化そうとしてるみたいやった
けど俺はしっかり聞いてたで?
何がありえへんねん
俺の何がありえへんねん
なぁ青山さん
過去に何があったんや
教えてくれへんか?
…いつでもええから

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