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さすがに無理やろ
第8章 立ち聞きと待ち伏せ

すると青山さんは
酔うてるからか
意外にも
クスッと笑って俺を見上げた

「本当に記憶を消せるんですか?」

「えっ?」

正直驚いた

その時の青山さんは
また俺の見たことのない青山さんで
まるで
肩の荷が降りたような…
何かが吹っ切れたような
いや
ただただ酔ってんのか
それとも
俺を信用してくれたのか…
ほんまの友人に見せるような
ちょっと穏やかで
せやけど
ちょっと悪戯な表情をしてたんや

そう

俺の好きな
峰不二子のような…

「消せる消せる!
マジで消す!
とりあえず方向感覚失うために
その場でグルグルバットするわ!」

「じゃあ…」

「じゃあ?」

「お願いします」

「ほんま?」

「はい」

「やった!
ほな行こ。
青山さんの気が変わらんうちに!」

俺がそう言って
ベンチから立ち上がり
青山さんに左手を出して見せると
「新飼さんは強引ですね」と
少しだけ白い歯を見せて微笑んだ

ええ!
ええ感じや!

「せやねん。
そこが俺の長所でもあり短所でもあんねん。
さぁ、ゆっくり立たなあかんで?
ふらふらしたら危ないしな」

と言いながら
青山さんの右手を
躊躇いなく握りしめると
青山さんは
俺に頼るようにしながら
ゆっくりと立ち上がった

「大丈夫か?」

「大丈夫です。
でも、ゆっくり歩いて下さい」

「わかった」

それから俺達は
手を繋いだまま
ゆっくりと歩き始めた

「なんや風が気持ちええなぁ」

「そうですね…」

「あー…なんか落ち着くなぁ」

「そうですね…」

青山さんと二人でおると
まったりするんは
なんでなんやろ…

時間がゆっくり流れてるような気がするわ

青山さん
会社では
無茶苦茶キビキビしてんのに

「なぁ…青山さん」

「…なんですか?」

「俺のこと
どんくらい信用してる?」

「そうですね…」

「正直に言うてええで?」

「そうですね…」

「うん」

「50%…かな?」

「微妙なとこやなぁー。
まぁでも半分以下やのうてよかったわ。
ゼロからスタートやから
かなり上がってきてるしな」

「クスッ」

「ん?」

「新飼さんて」

「うん」

「すごく前向きで強引で…」

「で?」

「私はいつも恥ずかしいです」

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