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恋がしたいと言いながら
第1章 待ちに待った呼び出し
「かっこいいなと思う人はいてもさ、実際そこからお互いのこと知って付き合って、とか先々のこと考えると面倒くさくなっちゃうんだよね」
真由ちゃんがぽってりした唇を尖らせて、ミルクティーに沈むタピオカをくるくるとかき混ぜる。
もう片方の指では長い巻き髪をくるくると弄りながら。
「わかるわかる!そこまでの労力かける相手かって考えるとそうでもなかったりするし」
亜実が短い髪を揺らして頷きながら、アイスコーヒーに浮いた山盛りのクリームを崩していく。真由ちゃんも大きく頷いて続けた。
「できれば向こうから来てほしいよねぇ。下手にこっちからアピールして調子に乗られたら最悪だし」
「まぁー来る相手にもよるけどね。微妙な男から好かれるのも面倒くさいじゃん」
「それね。もう顔とか年収とか贅沢は言わないから普通の良い人と出会いたいよね」
うんうんと頷き合うふたりに合わせて私も曖昧に笑いながら、アイスティーをひとくち飲んだ。
すっきりとして美味しい。やっぱりシンプルなのが一番だ。
そのとき、テーブルに置いたスマートフォンが震えだす。待ちに待っていた、彼からの連絡だ。
画面に表示されたその名前を見ただけで、心がそわそわと浮足立つ。いつでも見える位置に出しておいて良かった。
ふたりの話に相槌を打ちながらメッセージを確認する。
『きょう会える?』
内容はただそれだけ。思わず声を上げそうになって、口元を手で覆った。私がいつも待ち望んでいる、何より嬉しいメッセージだ。
「ごめん、私そろそろ行くね」
スマホとバッグを手にそそくさと席を立つと、真由ちゃんがにやにやと私を見上げた。
「なぁに、また呼び出し?」
「それしかないでしょ、この顔。ほんと健気だよねぇ、加奈は」
半ば呆れたような亜実の声を、背中で聞きながら店を飛び出す。