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恋がしたいと言いながら
第4章 オフィス
「どうしたの?」
「これぇ、意味わかんないんです」
 ひとみちゃんの指差す画面をしばし見つめ、ちょっと操作してみる。
「これで大丈夫?」
「わぁ、すごい!ありがとうございます」
 別段すごくもないし彼女にも何度か教えていることだ。
 しかしなにも身になっていないことはこの無邪気な笑顔から悲しいほど伝わってくる。
「わぁ、すごい!じゃないでしょ。あなた先日も同じこと聞いてたじゃないの」
 向かいに座る土井さんが棘のある声で言った。「わぁ、すごい!」のところだけ妙な高音だったのは声真似のつもりだろうか。
 めがねの奥で光る目はぎろりとひとみちゃんを睨んだ後、「ね?」と同意を求めるように私を見る。
 私は否定も同調もせず、ただ曖昧に微笑んだ。
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