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恋がしたいと言いながら
第15章 さよならえっち
 望んだ時間は唐突にやってきた。
 その日、仕事を終えてまっすぐ帰宅すると、部屋に優也くんが居た。
 合鍵はずっと前に渡していたけれど、彼がそれを使って部屋に来たのは初めてのことだった。
「久しぶり」
 リビングに座る優也くんはそう言って笑った。
 優しいのにどこか冷たい、清爽なのに妖艶な、私の大好きな笑顔。
 私は彼に飛び付いて、その身体を強く抱き締めた。
「痛いよ、加奈」
 頭の上から、苦笑まじりの声が降ってくるけど離さない。
「急に来てごめんね」
 お腹のあたりに顔を埋めたまま首を振る。グリグリ押し付けた鼻先を、彼の甘い匂いがくすぐった。
「ねぇ、加奈。俺……」
 なにか言いかけた優也くんの唇をキスで塞いだ。
 少し開いたままの口に舌を差し込んで、クチュクチュと絡める。
 厚くて長い、舌。煙草の味が濃い。今さっきまで吸っていたのだろうか。
「加奈……んぅ……」
 開く彼の口をすかさず塞ぎ続けていく。溺れてもがく人が浮き上がってくるたびに、その頭を沈めるような、情けの無いキス。
 なにも言わなくていい。なにも聞きたくない。あなたは私を抱いてくれれば、ただそれだけでいいんだから。
 ついに諦めたのか、優也くんが大人しくなった。私は彼のシャツのボタンをひとつずつ外していった。
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