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揺れる世界の秘め事
第8章 布越しの体温
「んっ……ちょ…っとぉ…」
「俺にされるの…嫌ですか?」
少しだけ泣きそうな声が背後から聞こえ、困惑する。

「……っ」
嫌か、嫌じゃないか…正直わからない。
こんなこと彼にされると思ってなかったし…原因も自分だし…

迂闊だった。
彼は本気かどうかは少し怪しいけど好意を抱いてくれてる…わけだし、でも…

「…とりあえず、離して」
「………」

彼の腕が少し緩んだのでバスタオルを片手で持ちながら腕からすり抜ける。
その瞬間彼が一瞬だけ手を伸ばそうとして、引っ込める。

くるりと有馬君の方に体を向けて視線を合わせる。
「イヤとか…よくわからないけど…ちょっとだけ困るかな…」
照れた笑顔を浮かべて背伸びをする。
「今は、まぁ、これくらいで許してね?」

頬にくらいならいいかなと思ったけど届かず、
ギリギリ届いた鎖骨にキスを落とし、離れる。
何秒か固まってた有馬君の頬が一気に赤くなる。

…さっきまで散々な事をしたくせにこういう所で少年のように照れる姿に…可愛いと思ってしまう。
「ぁ…いや、俺もシャワー借ります」
「うん」
そそくさと消えていく彼に少し笑ってしまう。

さてと…と心で呟いて着替え始める。
まぁ、今回のは私が悪かった。うん。
だから、まぁ…大丈夫…。

それからはお互い先ほどのことは会話に出さずに私が用意した朝ごはんを一緒に食べ、
電車を一本ずらして会社へ向かった。
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