この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
『君×僕×妖怪』
第3章 ―雨の日に―
朝の光が開いた襖から流れ込んだ。眩しい光に錺は目を開いた。いつもの愛想のない顔がいっそ人を寄せ付けない怪訝なものになる。
「日向様、朝ですよ。…あら、錺様」
そう言って使いの者と思われる女は頭を下げた。腰まで伸びた長い髪、色素の抜けた焦げ茶の瞳。色白の肌に柔らかく乗る昔と変わらぬ朱色。錺には見覚えがあった。
「…雅(ミヤビ)か…ご苦労」
名を呼ばれると少女は嬉しそうに微笑んだ。彼女は昔からこの家に使える雅。奏とは姉妹らしい――実のところは捨て子の二人を家に迎えた錺達の父が姉妹という関係にしたそうだ。
「日向様起きていますか?」
錺の背に隠れるように眠る日向を見て錺は首を振った。
「学校ですので、もう少ししたら起こしてあげてください」
そう言うと雅は襖を閉めた。
錺は寝息を立てる日向の耳を指でそっと撫でた。もぞもぞと動き布団の中へ潜ろうとする日向から無造作に布団を引き剥がし、起きろ、と声を上げると驚いたように日向は目を覚ました。