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夜明けまでのセレナーデ
第4章 ラプンツェルと聖夜の夜啼鳥
暫しの沈黙ののち…
「…私は貴方の父親なのですよ」
ひんやりとした声が聞こえてきた。
縋り付く瑞葉に八雲が跪き、顎を持ち上げる。
恐ろしいほどに美しい瑠璃色の瞳に見据えられる。
「…分かっている…」
「私は、貴方が我が子と分かっていても貴方に邪な欲望を抱いているような人間です。
そんな卑劣で鬼畜にも劣る私に、貴方は変わらない愛情を抱けますか?
…いや、そんな綺麗事ではありませんね。
貴方は私に抱かれることができますか?」
びくりと瑞葉のか細い身体が震える。

「…私は貴方のすべてが欲しいのです」
…身も心も、すべてを…。
薄い耳朶から頰、唇とその手はしなやかに動いた。
唇をそっと弄られ…長く美しい指を咥えさせられた。

…狂おしくも甘い膿んだような疼きが、背骨を這い上がる。
「…あ…っ…ん…」
その指が、おもむろに卑猥な動きを始めた。
…まるで…性器を出し入れするような淫らな動きだ。

「…貴方のすべてを奪っても…貴方は耐えられますか…?」
冷ややかな…けれど、どこか優しさの感じられる美しい声が鼓膜に絡みつく。

「…んっ…んん…」
瑞葉は必死に舌を遣い、男の指を舐めた。
その舌を、男が優しく…けれど執拗に捏ね繰り回す。
…下腹部に、甘い痛みのような疼きが走る。

「…あ…あ…んん…っ…。
…して…お前のものに…何もかも…奪って…」
肩を喘がせ、濡れた声を漏らす。
…この男が、父親でも構わない…。
八雲は、命だ。
八雲は、すべてだ。
八雲に去られることは、この世の終わりを意味しているのだ。

男はゆっくりと唾液にまみれた指を引き抜いた。
透明な真珠色の糸が引かれ…ぷつりと切れた。


…そうして、瑠璃色の瞳をした美しくも冷酷な悪魔は、この上なく優しく命じたのだ。
「…お父様と、言ってごらん。瑞葉…」

…それが、瑞葉の甘く歪んだ天国のような地獄の始まりであった…。




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