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夜明けまでのセレナーデ
第4章 ラプンツェルと聖夜の夜啼鳥
…目覚めたとき、男の姿は既になかった。

暖炉は赫々と燃え、部屋は暖かかった。
瑞葉の身体は綺麗に拭き清められ、新品の純白のナイトドレスを身に付けていた。

「…八雲…?」
起き上がり、名を呼ぶ。
サイドテーブルの上に小さな手紙を、瑞葉は見つけた。

「…永遠の愛と忠誠を…
メリークリスマス
八雲」

暖炉の傍らの小さなクリスマスツリーの飾りつけは完璧に終わっていた。
ツリーの根元には、プレゼントの数々が置かれていた。
色とりどりの包装紙やリボンで飾られた大きな箱が三つ…。
恐らく中身は高価な衣類や、贅沢品だろう。
この戦時下に、どうやって揃えたのだろうか…。

…子どもの頃から、そうだった。
家族の誰からもクリスマスプレゼントを貰えない瑞葉の寂しさを払拭するかのような豪華なさまざまなプレゼントの箱を部屋の小さなツリーの下に、八雲はそっと置いてくれたのだ…。

「八雲!サンタさんが来た!サンタさんが来たよ!」
イブの翌朝、八雲が部屋に入るなり、瑞葉は興奮しながら抱きついた。
プレゼントのひとつは瑞葉がずっと欲しかった100色の色鉛筆だった。
数ヶ月前、サンタクロースへの手紙に書いたのだ。

…サンタさんへ
ひゃくしょくのいろえんぴつがほしいです。
そのいろえんぴつで、やくもをかきたいからです。

「サンタさん、瑞葉のこと忘れないでいてくれたよ!
瑞葉のお手紙も読んでくれたよ!」
白い頰を薔薇色に染めエメラルドの瞳を輝かせる瑞葉を、八雲は優しく抱き上げた。
「それはようございましたね。
…瑞葉様はとても良い子ですから、サンタさんが忘れるはずはありませんよ」
細められた瑠璃色の瞳は、吸い込まれそうに美しかった。
「八雲…!」
嬉しくて身体をきゅっと縮めながら、男の引き締まった頰にキスをした。
「メリー・クリスマス、八雲」
八雲は、瑞葉にしか見せない極上の笑みを浮かべてくれた。
「…メリー・クリスマス、瑞葉様」

…あの頃から…八雲の愛は、変わってないはずなのに…。
変わってない…はずだ…。

プレゼントの箱を抱きしめ、瑞葉は呟く。

「…八雲…僕たちは…どこにいくのだろう…」
綺麗な赤いリボンに、一雫の涙が溢れ落ちた…。

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