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夜明けまでのセレナーデ
第10章 僕の運命のひと
「何ですか?僕は最近は至って真面目ですよ。
教員として舎監として為すべきことをして、きちんと働いています。
…お母様に叱られるようなことは何も…」

「貴方、お好きな方がいるの?」
息を呑み、光を見上げる。
「…え?」
自分と同じ琥珀色の瞳が、瞬きもせず真っ直ぐに薫を見つめていた。
「貴方はその恋人を、ずっと待っているのですか?」
思わず黙り込む。

「その方は…戦争からまだお戻りではないのね?」
静かな声に、反射的に答える。
「…はい。お母様」
…相手が誰だか、分かったかも知れない。
薫はずっと暁人を待ちたいから疎開しないと言い張ったからだ。

分かっても構わないと、薫は思った。
暁人が好きだと…暁人が恋人だと…光に知られても構わないと薫は思ったのだ。

琥珀色の瞳は暫し見つめ合い…やがて、光はふっとその眼差しを柔らかく崩し、微笑の色を滲ませた。

「…そう…」

…そうして、いたわりと愛に満ちた声でこう告げたのだった。

「…一日も早く貴方のもとに戻られたらいいわね」


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