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夜明けまでのセレナーデ
第10章 僕の運命のひと
暁人から詳しい話を聞けたのは、翌日…朝食を終え、居間で皆が集まったときであった。
大紋や絢子、暁人は夜会のあとそのまま、縣家に泊まったのだ。
絢子が興奮がなかなか収まらず、帰宅するのも難しかったからだが、薫は嬉しかった。
暁人と一緒にいられるからだ。
…けれど、絢子が暁人の傍らを離れようとしなかったので、二人きりになどなれなかったのだが…。

「暁人。お前はこの二年間どうしていたのだ?
私は様々な伝手を辿ってお前の消息を探し求めたのだよ。
しかし、入ってくる情報はすべて、軍艦は沈没し生存者は皆無という情報ばかりだったのだ」
大紋の言葉に、皆が暁人に注目する。

暖炉の側、長椅子に絢子と腰掛けた暁人は、昨日とは違う服装だがそれも仕立ての良い上質なシャツでありジャケットであった。
しかも、それは日本製のものではなかった。
薫は不思議だった。

…戦地や抑留地から帰国する軍人は皆、ぼろぼろの軍服を身に纏って、痩せ細り鬼気迫るような容貌をしているというのに…。
暁人は違っていた。
頰は削げ、精悍な貌立ちではあったが、貌色は良く栄養状態も良さそうであった。
まるで…最近まで満たされた富裕な暮らしをしていたかのような…。


清しい眉を寄せ、暁人は苦しげに口を開いた。

「…私が乗っていた軍艦はあの日、敵機の攻撃を受けました。
船が沈没する際に、私は海に投げ出された部下を助けようとして、そのまま波に飲み込まれてしまったのです」

…暁人の話は、息を飲むような波乱に満ちたものであった。
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