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森の中
第3章 3 キス
 次の週、瑠美は男のいる山へ向かった。舗装がされていない山道でジムニーはガタついて揺れる。男の運転と身体を這う指の滑らかさを思い出し奥のほうから熱いものが広がってくるのを感じた。少し心拍数が上がり始めたので深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

 坂道を登り切り拓けた場所に来ると木陰の下でフォレスターが停まっているのが見えた。
(よかった。いる)瑠美はほっとして駐車した。
 車を降り息を弾ませて小屋にたどり着く。ドアをコンコンとノックをして待つ。ガタっと音がしてドアが開き相変わらず迷惑そうな困惑したような表情の男が立っていた。
 ぶっきらぼうに「どうぞ」と言われ瑠美は「失礼します」と中に入った。

「座って」

 椅子に腰かける。小屋の中は薪が焚かれ暖かく、ちょうどよい湿度が心地いい。

いきなり男が尋ねる。

「欲しいのか?」

 瑠美は欲しくないと言えば嘘になるが欲望を発散するという目的ではなく、ただ男に会いに来ていた。しかしそれを説明するのが難しく理由もうまく話せそうにない。
 そうなると『欲しい』と答えるしかなかった。

「はい」
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