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森の中
第3章 3 キス
 冬樹は身体を起こして横たわっている女を見る。全身を小刻みに震わせながら、短い呼吸を繰り返している。
 ティッシュペーパーでペニスの愛液をふき取り、女の肩をつかみ仰向けにした。足を軽く開かせ股間の愛液を拭いてやると小さな声で「ありがとうございます」と、言う。

「シャワー使えるよ」
「いえ。このままで大丈夫です」

 髪は乱れ、顔も紅潮させたまま着替え始めた。

「ゆっくりしていいよ」
「あ、はい。ありがとうございます」

 また茶を入れると嬉しそうに飲むが長居をしたくないようでそそくさと帰って行った。


 (変わった女だな)

寝た後にしつこくされることは多々あったが、こんな風にさっさと帰る女も珍しいと冬樹は思った。また今まで抱いた女とも違い快感への余裕のなさが冬樹に強い印象を残す。妻も含め冬樹の知る女たちは快感に余裕があった。たとえ絶頂に至ろうが、自分自身をよく見せたいという無意識の自意識を感じることが多かった。ひどい女になると、何かする前から感じている演技を始める。

 帰って行った女の快感へののめり込み方は自我を失っているように見え、自分の腕の中で燃え尽きてしまうのではないかと思うほどだ。
 冬樹自身もそんな女の官能に引きづり込まれそうになり我を忘れるところだった。

(また来週か……)

感じている表情を観察すればするほど妻とは似ていないという実感に少し安心感を得てロッキングチェアをゆっくり揺らした。

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