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戦場に響く鈴の音
第6章 覚悟
飯も食わないとか、あいつは死にたいのか?
嫌な予感がする。
俺だって李から解放されるまで何度もそれを考えた。
俺の場合、いつか李を殺してやるという気持ちが勝った為に与えられた僅かな飯を必死に食って生き延びた。
だけど鈴が既に自分の人生を諦めてたら…。
考えるだけでゾッとする。
まだ6つだ。
人生に絶望するには早過ぎる。
段々と凹む俺を慌てる直愛が慰める。
「少し時が経てば鈴殿の方から神路殿の傍に居たいと言い出しますよ。」
んな、可愛げのある甘え方をするガキかよ…。
お人好しの直愛に疑いの視線を浴びせれば
「お食事をお持ちします。もちろん鈴殿の分も…。」
と言いながら俺の天幕から逃げやがる。
直愛では雪南のようにいかない。
雪南なら鈴を無理矢理にでも、ここへ抱えて来て主と小姓の関係の何たるかを俺と鈴がうんざりするまで聞かせて来る。
飯だって
『お前は何様だ?』
とでも言って鈴の口にねじ込んででも雪南なら食わせてる。
直愛の温い行動では鈴が俺の天幕に戻って来る事など当然なく、飯も鈴の分だけが残されたままだ。
「勝手にしろ…。」
不貞腐れて寝所の天幕で床に入る。
夕べの睡眠不足と昼間の疲れからか、すぐに眠りには落ちる。
誰かに揺すられて目が覚めた。
「何だよ?」
俺を起こしたのは直愛だ。
「シッ…。」
と直愛は人差し指を立てて自分の唇に当てる。
夜這いか?
雪南になら、そんな冗談を言うところだが直愛には言うだけ無駄だと思う。
「後はお願いします…。」
直愛が声を潜めて言う。
何がだ?
俺がそう聞く前に、直愛は床の上に座る俺の膝の上に眠ったままの鈴を置く。
「流石に眠ってはくれたのですが、床には入らずに地面の上で座り込んで寝るのですよ。」
直愛が困った表情で鈴を見る。