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幻の果てに……
第4章 妄想
「疲れたー」
家に入るなり、静香が声を上げる。
電車もなかったし、タクシーで帰ってきた。
朝帰りでも、女性と一緒なら近所の人に見られても「呑んでいた」で済む。昨夜家を出る前に、静香と呑みに出ると夫にもメールしておいた。
「さっさと寝ようよ」
静香はスポーツでもしてきたように、いつもと変わらない。
二人切りになると、何となく恥ずかしくなる。
ついさっきまで、全裸で悦がっていたのに。
でも確かに、私も疲れていた。
「布団敷くね」
「梨央と一緒でいいよ? ベッド、ダブルでしょ?」
静香は私が結婚してすぐここに来て、家中を見て回ったから全部知られている。
置いていった鞄からパジャマを出すと、彼女はその場で着替え始めた。
下着姿を見ただけで、ドキリとするなんて。それ以上を見てきたのに。
「寝よう。眠い……」
先に二階へ行く静香に付いて行った。
「どうぞ」
寝室のドアを開けると、彼女はすぐにベッドへ横になる。
私は何故か隠し気味に着替え、隣に寝た。
「ここで、いつもダンナさんとセックスしてるんだよねー?」
「そんな……。数ヶ月に一度しか帰って来ないもん……」
間近で訊かれると恥ずかしい。
「ウチだって、週一くらいだよ? 会社の付き合いとかで、いつも遅くてさー。子供が欲しいとか言ってるクセに。浮気してるんじゃないかなー」
「浮気?」
「別にいいけどねー。問題さえ起こさなきゃ。私も好きに出来るしー。梨央ってさー、思ってたより激しいんだね」
ニヤニヤしながら言われ、恥ずかしくて視線を外してしまう。
冷静になってみると、凄いことをしてしまった。
性器をしゃぶりながら、別の男に挿入されていたなんて。その相手は静香を愛撫していた。
知らない男達との、一夜限りの幻。
そう考えようとしても、一緒だった静香がいると鮮明に思い出してしまう。
「静香は、子供欲しい?」
「んー。どうかなー。もう少しいいかも」
今は、三十代や四十代で出産するのも珍しくない。
夫は子供を欲しがるが、その世話をするのは私。出産だって苦しいと聞く。