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幻の果てに……
第4章 妄想
可愛がればいいだけの夫とは違う立場。それも、いつ単身赴任が終わるのか分からない。
結婚した時は、友人達に羨ましがられた。「早く結婚したい」という友達が殆どで。でもそう言った友人達は、自分の時間を楽しんでいる。
私は夫の不在が多いから自由な方だろうけど、それでも“主婦”という立場なのは変わらない。子供がいても、いなくても。
結婚するのは、子供を持つためなんだろうか。
“家族”という概念はある。二人でもそれ以上でも、“家族”は“家族”。
夫は長い間留守で、私は知らない男性に自ら抱かれに行く。
それは、“家庭”が崩壊しているという意味なのだろうか。
「梨央? どうしたの?」
「う、ううん。電気消すね」
「んっ。おやすみー」
手元のリモコンで、部屋の灯りを消した。
少しすると、静香の寝息が聞こえてくる。
疲れているはずなのに、何故か寝付けない。
私を抱いた男達は、また別の女性を求めてあの店へ行くんだろう。
愛情が存在しないセックス。それを楽しんでいる。
夫への裏切り。
そうかもしれないが、ラブホテルを出ればいつもの私に戻る。
何もなかったことに。
幻として。
そんな生活を続けていくのも、限界があるだろう。いつかは夫に知られるかもしれない。
あの店へ行くのは、もうやめたほうがいいのだろうか。
それが出来るだろうか。
止めようとする自分と、無理だと思う自分。
まるで、天使と悪魔の囁き。
一度知ってしまった悦楽は、そう簡単には手放せない。それに、すぐ手が届く所にある。
同じ男性と何度も、という不倫じゃない。
愛情も存在していない。
そうやって言い訳ばかり考えるのは、もう無理だということ。
一歩だけ。たった一歩だけと踏み出したら、いつの間にか底なし沼へとはまっている。
無理。
そう思いながら、暗い天井を見つめた。