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幻の果てに……
第5章  初体験


 バイブでの妄想の翌日から生理が始まり、オナニーも出来ずにいる。
 そんな中静香からの誘いはあったが、断るしかなかった。
 一人の夜。テレビは点いていたが、内容は頭に入ってこない。
 静香は今頃相手をみつけ、セックスしているだろう。
 4Pの時に、彼女のセックスや喘ぎは見ている。またあんな風に激しく乱れていると考え、羨ましいと思ってしまう。
 以前の私は、セックスに拘っていなかったのに。
 するのは夫とだけで、それも子作りのため。
 もしかしたら、その“子作り”というのが負担なのかもしれない。
 私は、子供が欲しいのだろうか。
 近所から「子供はまだ作らないの?」と言われて、持たなければいけないと思い込んでいた。
 結婚したら、自然に子供が出来るものだと。
 毎年、子供の成長を年賀状にしてくる旧友もいる。そんな事もあり、子供がいないことに引け目を感じていた。
 それは間違いかもしれない。
 人それぞれ、人生は違う。
 子供がいないまま、夫婦二人だけで暮らしたって悪いことじゃない。
 跡取りを必要とする稼業でもないし、継いだ方がいい珍しい苗字でもない。
 そう考えると、少しだけ気が楽になれた。


 ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆


 ドアを開け、あの店へ入る。
 生理が終わってすぐ、また一人で来てしまった。
 静香にも言っていない。
 カウンターに座り、カクテルを呑んでいた。
 平日でも、いつもこの店は客が入っている。それが私を安心させてくれた。
 一人じゃない。
 私だけじゃない。
 中には独身もいるだろうが、家庭があれば壊したくないと思う集まり。
 成人した男女が、自分の意思で行動する。買う、買われるでもない。店は場所を提供するだけの合法。
 それにも、安心感があった。
 配偶者以外だからこそ、燃えられる。
 数ヶ月置きにしか会わない私だってそうなら、毎日顔を合わせる夫婦はすぐ倦怠期になるだろう。
 想像でしかないが。
「こんばんは」
 声の方を向き、その相手を見つめてしまった。
 笑顔で隣へ座ってくる。
「薫。30だけど、ダメ?」
「え……」
 その姿も声も、明らかに女性。



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