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幻の果てに……
第6章  衝撃



 夫を見送ってから、急いでネットで検索をする。
 見つけたのは、女性用の避妊薬を処方してくれるクリニック。
 セックスの後72時間以内に飲めば、卵子の着床を防げるそうだ。
 一昨日の分はもう駄目かもしれないが、その後の分ならまだ72時間経っていない。
 何件か電話し、すぐカウンセリングが出来るクリニックを見つけた。
 カードで支払えば、明細が届いてしまう。
 急いで銀行のATMへ寄り、クリニックへと向かった。


 ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆


 カウンセリングでは、もう子供が三人いると嘘をついた。
 保険適応外のため、名前も住所も結婚する前のものを提出。身分証明書は持っていないと言って。
 その場で錠剤を飲み、ホッとする。
 効き目は100%じゃないと説明されたが、かなり高い確率で妊娠を防げるそう。
 一昨日の分にもある程度効果があるとも言われた。
 値段は安くないが、妊娠するよりはいい。
 半年前まで子供を望んでいたのが嘘のよう。
 本来は、レイプなどをされたつらい人のための薬。でも私も、今は子供が出来ても可愛がれる自信が無い。
「あら、小坂さん。お買い物? いいわねぇ。子供がいないと身軽で」
 近所で、“世話焼きオバサン”に声をかけられた。
 こんな時のためにと、駅前のスーパーで食材を買った袋を手にしている。
「はい。出来るまでは気楽にしようと思って」
「そうよねぇ。子供がいたら大変よぉ? ほら、三件先の青井(あおい)さん。四人目ですってよ」
「大変ですねぇ。冷凍食品も買ったので。失礼します」
 笑顔で頭を下げてから、自宅へと歩き出す。
 子供の話題が嫌じゃなかった。
 作らないと自分で決めたら、精神的に楽になった感じがする。
 今までつらかったのは、子供を産まなくちゃいけないと思い込んでいたせい。
 “出来ない”と“作らない”は違う。
 夫には言えないが、私にだって選択する権利がある。
 クリニックでは、頻繁に処方出来ないと言われた。でも、同じようなクリニックは結構ある。
 夫が戻るのは三ヶ月に一度。その直前に、別のクリニックへ行けばいい。
 リラックスした思いで夕方を待ち、繁華街へと出かけた。



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