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幻の果てに……
第7章  没落


 ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆


「ん……」
 目を開けると、広いベッドの上。
 全身が精液まみれで、乾いてきたらしく薄い膜のようになっていた。
「梨央。気が付いた? 悦すぎて気絶したみたいだね。こういうのも、結構好きなんじゃん?」
 卓也達は下着だけを穿いて、ビールを呑んでいる。
「なあ。友達いないの? ヤれる子」
 そう言われても、こんな場所へ誰も引き込むことは出来ない。
「いない……」
「あの店に、二人で入って来たよね」
 卓也が言う。
 静香のこと。
「いいじゃん。その子も呼ぼうぜ」
「ヤりたい子なんだろ?」
「ここなら、タダで出来ていいじゃん。拓也、引っかけてこいよ」
 静香を巻き込みたくない。
「やめて。あの子は、家庭があるから。旦那さんが、毎日帰って来るから」
 彼女はそうそう家を空けられない。うちに泊まると言っても、限度がある。
「なーんだ。まっ、いいよ。梨央だけでも」
「梨央ちゃんも楽しんでたよな。喘いじゃって」
「梨央。一度シャワー浴びてこいよ。あっちの奥」
 卓也が顎で廊下の方を示す。
 一度。
 そう言ったからには、まだ続けるつもりなんだろうか。
「ねぇ。今日はもう、帰らせて? また、来るから……」
 どうせ逃げられない。
「どうする?」
 男達は少し話し合った後、私は解放された。
 また呼ぶと言って。
 しっかりシャワーは浴びたが、男達の精液が残っている気がしてならない。
 タクシーの中、涙を堪えた。


 ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆


 家に戻り、湯船に浸かる。
 この先、どうなってしまうんだろう。
 夫が戻る時は呼び出さないと、約束はしてくれた。避妊もすると。
 妊娠すれば、私をおもちゃに出来なくなるから。
 泣く気にもなれなかった。
 全て私が引き起こしたこと。
 最初にあの店へ誘った静香は悪くない。
 私がそこでやめていれば。
 大人として、自分で行動した結果。
 風呂から上がっても、疲れと心労で食欲が無かった。
 ジュースだけを飲み、ベッドへ入る。
 今まであの店で、何人もの男性とセックスをした。
 それは、幻を見たかったから。



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