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幻の果てに……
第7章  没落


 それなのに、今更子供なんて考えられない。
 内緒で避妊薬を飲み、子供が出来ないと悩む振りをして。
 夫が戻る度、私から求めた。
 普段セックスをしていない振りをして。
 複数の男達に慣らされた体は、夫だけじゃ満足出来なくなっていた。
 それでも家庭を守るために、貞淑な妻を演じて。
 子供なんて欲しくない。
 妊娠すれば、彼らとセックスが出来なくなる。
 頭にはそれしかなかった。


 ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆


 夫が戻ったことを連絡したのに、卓也からの返信がないまま一ヶ月。
 やっと返信が来てマンションへ行くと、そこにいたのは卓也だけ。
 すぐ服を脱ごうとすると、彼に止められる。
「梨央。もう、終わりにしよう」
「どうして……?」
 知らず知らずのうちに、私は複数の男に犯されるのを楽しんでいた。
「前に撮ったやつは、全部捨てるから。約束する」
「だから、どうして?」
 私から卓也に縋る。
 最初はあんなに嫌だったのに。
 撮影されたものがあるから、言う通りにしていた。
 そのはずだったのに。
「俺にも、子供が出来たから。妻の実家の近くに引っ越すんだ。ここは引き払う」
 以前聞いたのは、ここはセックスをするためだけに共同で借りていたこと。
 その仲間も減り、首謀者の卓也までここを去る。
「私はどうすればいいの? みんなのために子供も作らないようにって、避妊薬まで飲んでたのに」
「潮時だよ。梨央。今までは、全部、幻。そう思ってくれ」
 幻。
 私は最初、そう思ってあの店に通っていた。
 一時の幻でいいと。
 ラブホテルを出れば、現実に戻る。
 そこからここへ集まる生活になった。それは本当に生活の一部で、いつの間にかその日が楽しみになっていた。
「悪い。明日には、荷物を運び出すから」
「ベッドが無くなったら、何も出来ないじゃないっ」
 卓也は、無言で困った表情。
「終わったんだよ。幻は。現実に戻ろう……」
「嫌っ。今更、そんな……」
 体は覚えてしまった。
 長い悦楽の時間(とき)を。



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