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幻の果てに……
第8章  バッドエンド編


 ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆


 私は夫と離婚した。
 子供について、話し合いは平行線のまま。
 夫の単身赴任も終わらない。
 そんな生活じゃ、どうせ夫婦関係は破綻している。
 三ヶ月に一度戻るのは変わらなかったが、その時にもセックスをしなくなった。
 離婚を言い出したのは夫から。
 私はわざと嫌だと言い、多額の慰謝料を手にした。
 法的に支払う義務は無いが、夫からの謝罪。
 長い間放っておいた、自分の責任もあると言って。
 それでも、遊んで暮らせるほどの額じゃない。何とか小さな会社の経理の仕事に就くことが出来、生活に困らない程度の給料を貰っている。
 ワンルームのマンションでの生活も、一人なら楽でいい。
 広い室内の掃除をしなくて済む。あの家の三階にあった、使われずじまいの部屋のように。
 子供部屋になる予定だった部屋。
 結婚してから数年経つと、あの部屋を見るのがつらかった。
 でも、それももう過去のこと。
 あの店のカウンタ―。
 来られるのは二週間に一度だが、それでも満足だった。
 隣の席の女性が、男性に声をかけられる。
 テーブル席へ移り、少しして店を出て行った。
 ここはセックスの相手を探す場所。
 お互いに気に入れば、すぐにラブホテルへ向かう。
 定期的に通っているせいで、時々マスターとも話すように。
 カウンターの中にいるバーテンダーも、私を見るとすぐ同じカクテルを出してくれる。
 常連にはなったが、同じ男性とは一度切り。偶然店内で会っても、知らない振り。
 それが、私の中のルール。
「梨央さん。大丈夫ですか? 今日は結構呑んでますね」
 バーテンダーに言われ、笑顔を返した。
 呑むのは、この店だけ。
 元々そんなに呑む方じゃなかったのに、呑み放題となるとペースが上がってしまった。
 それにお酒が入っている方が、セックスを楽しめる。
 何気なく店内を見回すと、一人の男性と目が合った。
 男性が近寄って来る。
「前に……。会ったよね?」
 きっかけ作りの手口かと思った。
「違う? 浩太だけど。前に、友達と4Pやった……」



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