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泥だらけのお姫様
第10章 【番外編】幼女な姫と優しい王子
「大丈夫。母さんが母さんで良かったよ。俺、母さんのおかげでこんなに大きくなれたんだよ。これからは母さんのことは俺が絶対に守るから。何でも言って? もう俺、18歳だからさ。あの頃、怖くて父さんから助けられなくてごめん。もう一人でさ、頑張らないで?」

 母さんは俺の方に顔を見上げる。涙でぐしゃぐしゃにしながら言葉を紡ぐ。

「息子にね、こんなこと言うのはおかしいと思うけど、母さんね、ずっと愛されていたかった。甘えたかったし、甘えられたかった。好きってただそれだけだった。私だけを見て欲しい。寂しかった。埋めたかった心にぽっかり空いた穴」

 俺はもう一度、ぎゅっと強く抱き締めた。

「もういいよ。ずっとこれからは俺がいるから。あと一ヶ月したら帰ってくるから」

 母さんが俺の腕の中で思いっきり泣いた。あの時と同じ。下半身が熱くなるのを感じた。泣き止むまで、母さんの頭を撫でた。弱っている時が落としどころだと本屋で立ち読みした恋愛本に書いてあった。

 けれど、この日は寮に、学校に帰りたくなくなるのが怖かったので、それ以上、触れることはなかった。
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