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泥だらけのお姫様
第10章 【番外編】幼女な姫と優しい王子
 

           ***


 一ヶ月後、俺は実家へと引っ越した。

「ただいま」

「お帰りなさい。優希の大好きなご飯、たくさん作ったわよ」

「ありがとう」

 荷物を片付けて、ご飯の時。

「母さん、なんか……俺にして欲しいこととかない?」

「えっと……特に……ないわよ」

「分かった。なんかあったら言ってね?」

 俺は母さんの頭を撫でた。年を重ねたはずなのに、あの頃より母さんは美人になった気がする。まとう色気が違う。俺がいない時に何かあったのだろうか? 父さんが邪険に扱っていた人、それは俺にとって今まで届かなかった人。

「ありがとう」

 母さんがぎこちない笑顔を浮かべる。本物の笑顔に溶かしてあげたい。俺はそう思った。
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