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泥だらけのお姫様
第10章 【番外編】幼女な姫と優しい王子

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「将さんっ……!」

 そう言って母さんはガバッと起きた。将さんって誰だ? と思ったが、父さんがあんな態度だと寂しくもなって、不倫のひとつくらいするよな。と俺は妙な落ち着きで納得した。けれど、先日からのこの様子じゃ、その男にも捨てられたのだろう。可哀想な母さん。俺はずっと一番に愛してるからね?

「おはよう……」

 少し前に起きていたが、俺は今しがた起きたフリして、あくびをする。不倫相手の名前を叫んでいたことなんて、俺に知られたくはないだろう。

「あっ……」

「母さん、どうしたの?」

「ううん、なんでもない」

 母さんはそう言いながら、声はあげないものの、ぽろぽろと幼女のように泣き出して……。こないだ見たもの。大方、それが原因なのだろう。

「なんでもないのに泣かないよ~」

「ダメっ」

 俺が母さんのふわふわパジャマに手をかけようとすると制止する。

「ダメじゃなーいの」

 あの頃よりも痩せた母さん。大きくなった俺。力の差では俺のほうが強い。するりとパジャマのズボンを脱がすと膨らんだオムツが露になる。テープを容赦なく外す。

「ガキで……ごめんなさい……」

 と小さな声で呟いた。そんなことを言ってなじったのはあの男(父親)だなと、怒りが沸いた。
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