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降りしきる黄金の雫は
第1章 1 植木
 こざっぱりとした庭の木々を眺めて帰宅していると、大家さんが唸っているのが聞こえて足を止めた。

「どうしたんですか?渡辺さん」
「んん?ああ、影島君、今帰りかね?ちょっとこの木を見てくれんかね」
「ああ、いいですよ。お邪魔します」

 庭先に入り大家さんの目の前の木を眺める。2メートル近い綺麗に剪定されている金木犀だが、この時期にまだ花をつけていない。

「散った後でもないですよねえ」
「そうなんだよ。知り合いから譲ってもらったんだが全然咲かないんだ。なかなか由緒のある木らしいんだが、どうも色々整頓を始めてなあ。植物もあちこちに譲っているようで、うちはまあまあ庭が広いからってこいつが来たわけだが、咲かない金木犀をもらってもなあ……」

 木肌を撫でたが、弱くはなく葉も艶やかな緑だ。

「病気はなさそうだし、むしろ元気ですけどね」
「うーむ」
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