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降りしきる黄金の雫は
第17章 17 比翼
――在天願作比翼鳥、在地願爲連理枝…… ( 天にあっては願わくは比翼の鳥となり、地にあっては願わくは連理の枝となりましょう)

「そ、それは――」

桂さんを思い出すと涙が溢れる。

「あ、え、どうした、いきなり」
「その、歌。桂さんも歌ってたんです」

「そうか――すまなかったな」
「いえ、こちらこそ、せっかくの先輩の中国語が」

「いいんだ」

先輩はポケットからハンカチを差し出し、僕に渡すと窓の外の景色を見始めた。

「なあ芳樹。桂さんのことは忘れなくていいし、愛したままでもいい。そのままでいいから、ちょっと俺の方も向いてくれないかな。
こうやって桂林でもどこでも一緒に行かないか?」
「先輩――」

窓の下には靄のかかった林と尖った山々が見えると機内に歌が流れ始めた。

「綺麗な歌ですね。意味は分からないけど」
「ラブソングだよ、現代の。何千年経っても誰かを想う気持ちは変わらないものなんだろうな」
「そう――なんですね」

桂さんは僕を想ってくれていたからこそ、病を引き受けて旅立った。僕には先輩がいるからだと思ったのだろうか、それとも樹木医としての僕を惜しんでくれたのだろうか。
人でないものが人を愛し命を奪う話はあるが、彼は崇高な樹木だった。欲望を最後まで彼は持つことがなかったのだ。それが少し恨めしくも寂しくもある。
感傷に浸っている僕に先輩は明るく「そろそろ到着だぞ」と声を掛ける。

「はい!」

今、あなたの故郷に行きます。
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