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狼に囚われた姫君の閨房録
第22章 新八と一の謹慎騒動
騒動は年明けに起きた。
お雑煮をみんなで食べていた時、平助が言った。
「新兄ぃと一、まだ島原から戻らねえのかな?」
和気藹々としていた広間が静まった。大晦日から足掛け二日、新八と一が島原にい続けている。
誘ったのは伊東である。外泊には許可がいるのに、無断での逗留であった。 
「ほっとけ」
箸を止めずに、歳三が言い捨てた。
「隊規違反は切腹!それを百も承知で、戻ってこねえんだろうが」
「でも……兄上さま」
私の胸の奥が痛んだ。伊東に誘われた新八についていってあげてほしいと、一に頼んだのは私だから。
「伊東参謀を始末する気?歳三兄さんらしいえげつなさだね」
碗を片手に、総司がクスクスと笑う。
雑煮はあまり減っていない。小康状態とはいえ、食欲がわかないのだろう。
「新八や一も同罪ってことか?」
左之助の声が尖ったが、歳三は目も合わせなかった。左之助は声を荒げた。
「答えろよ。そうなのか?兄貴」
「だったら、どうする?」
「な……!」
「局中法度は絶対だ!これは何度も口を酸っぱくしていってきたことだ」
「あんた!」
左之助が荒々しく立ち上がると、
「俺が島原に迎えをやろう」
おせち料理の重箱をつついていた父が口を挟んだ。空気を和らげるように、わざと朗らかに。
「局長の俺が帰営しろといえば、すぐ戻るだろう」
「頼めるか……親父さん」
「うむ。歳もそれでいいな?」
歳三は無言だが、反対はしなかった。
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