この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
狼に囚われた姫君の閨房録
第23章 山南脱走
草木も眠る丑三つ時。眠れなかった私は床を出た。
月明かりもなく、真っ暗だ。寝静まっているのだろう。屯所内は物音一つしない。
私は手燭を手に、庭に降りた。目指すは、山南が押し込められている牢。せめて、一言なりと話がしたかった。
夕立ちの名残りの水たまりをよけて先を急いでいると、
「こんな夜中に何してるのさ?」
背後から、声がかかった。すぐに、総司だと分かった。
「おじさんの牢に行くつもりじゃないよね?」
「立ち入り禁止だと兄上に言われたはずだ」
暗闇の中で、一の目の奥が光る。
「お目にかかるだけでいいんです。お世話になっていたのに、あまりにも突然で……」
私は唇を慄かせたが、一が冷ややかに言い放つ。
「そなたも大老の姫ならば、分かるはずだ。会ったとて、未練にしかなるまい。おじ上の恥になる。やめておけ」
「ですが……」
「じゃあさ、言伝を承るよ。介錯は僕がすることになったから」
私は総司を見た。総司ならば介錯役には適任だが、体は大丈夫なのか?
総司はフッと笑った。
「介錯もやれないほどの重病人じゃないよ。それで、伝言は?」
「今までありがとうございました。おじ上様のことは忘れませぬと」
ありきたりだが、これ以上のことは言えない。全ての気持ちを込めた。
「心得たよ。たしかに、伝える」

元治二年二月二十三日。山南敬助は、見事な割腹を遂げた。
享年三十三。遺体は光縁寺に納められた。
/277ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ