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狼に囚われた姫君の閨房録
第24章 将軍上洛
慶応元年三月。新選組は屯所を西本願寺に移した。
隊士は二百有余名を超えた。広いところに屯所を構える必要があったのだ。
私は奥の一画を居住地として与えられた。
いつしか、細かい霧雨が降り始めた。岩組みと白州をしっとりと濡らしていく。
「すみれ……」
名を呼ばれ、わたしは読んでいた『源氏物語』から顔を上げた。障子の向こうに容保様の姿があった。
私は慌てて書物を閉じて、障子を開けた。畳に手をついて平伏した。
「いらせられませ」
「久しいな。息災だったか?」
容保様は上座に腰を下ろした。お会いするのは、何ヶ月ぶりだろうか?
「西本願寺に移ったと聞いてな。顔を見に来たのだ」
「わざわざのお運び……もったいない。すみれは壮健にございます。新選組も日々鍛錬に励んでおります。ご案じあそばしますな」
容保様はふふっと笑った。
「坊主共は迷惑だろうがな」
「恐れ入ります」
新選組は殺戮集団だ。殺生禁断の地に邪魔者であることはわかっている。
「して、ご用は?それだけの用件でいらしたのではございますまい」
「家茂将軍が孝明帝に招かれてな、五月に京にお入りになる」
容保様は私を引き寄せると、ほおを挟み込んで仰向けさせた。
「上様は二条城にお泊まりになる。新選組にはその際の警護を頼みたい」
「将軍様の警護を!」
「見廻組も加わるが、主力は新選組だ。そう話したら、近藤が涙ぐんでな。涙もろい男よ」
私には父の気持ちがわかる。
将軍家の警護だけでも栄誉なのに、旗本である見廻組を差しおいての主力とは!
新選組の実力が認められたということだ。
「ところで、そなた、上様とは顔見知りであったな?」
「はい、何度かお話相手を……」
家茂が将軍職に就く際、尽力したのは父の井伊直弼だった。その時の話し相手を務めたのが私である。
「家茂公が久々にそちをみたいと仰せだ。異存はあるまいな?」
「異存などと……光栄にございます」
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