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狼に囚われた姫君の閨房録
第24章 将軍上洛
慶応元年五月二十二日。長州征伐のため、家茂公が上洛した。
空はどこまでも蒼い。爽やかな風の吹く初夏のことだ。

夜。私は二条城に招かれた。
庭に面した長い回廊を渡り、奥の間に私は案内された。小姓が襖の向こうに呼びかけた。
「すみれ姫さま、お越しにござりまする」
「待っていた。通せ」
室内から声が返った。豪華絢爛な襖が両側から開けられた。
三十畳はあるだろう広間。龍虎が描かれた格天井。羅紗の敷き物の上に猫足の卓子があった。
向かい合わせに上様と容保様が座っていた。家茂公は椅子に座った私を、穏やかに眺めた。
「そなたは変わらぬな。息災であったか?」
屈託のない笑み。このお方も二十歳になっても変わらない。
「おかげさまで、風邪もひきませぬ」
「先ほど、近藤と土方なるものが挨拶にまいっての、その方のことを話していたぞ」
「お恥ずかしゅうございます」
「気性は激しいが、情の厚い者たちだ。そちをとても案じていた。幸せそうで安心したぞ。直弼もあの世で安堵していよう」
「恐れ多い。将軍様にそのようにお心にかけていただくなど……」
私は上様を見返した。
もともと線の細いお方だけど、かなり痩せている。血色がなく、生命感も感じない。
「上さ……」
私が言いかけるのを、
「将軍家、堅苦しい挨拶はそのくらいで……」
容保様が遮った。
「すみれ姫に飲ませたいものがあったのではござらぬか?」
「そうであったな。珍しいものが手に入ってな」
上様はぱんぱんと手を鳴らした。盆に硝子の瓶を乗せた侍女たちが入ってきた。
「西洋の酒でな、葡萄酒というそうだ。なかなかの美味でな。共に楽しもうと思うてな」
紫色の液体が洋杯(グラス)に注がれる。
大丈夫かな?私は日本酒すら、ろくに飲めないのだけど……
「飲んでみろ。なかなか、いけるぞ」
容保様に勧められ、私は洋杯に口をつけた。
甘い。しぶさはあるけど、まろやかな味わい。私の口によく合った。
「美味でございます」
「だろう? 今宵はな、そこもとや容保とのんびり語り合いたい。もっと飲むが良い」
上様はそう言ったが、自分が葡萄酒を飲むことはなかった。
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