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狼に囚われた姫君の閨房録
第27章 下手人は原田?
慶応三年十一月十六日。
雲の隙間から差し込む初冬の陽射しは弱い。
庭先では平隊士たちが稽古をする声が響いていた。
不動堂村に屯所を移したのは六月のこと。隊士たちは活気がみなぎっている。
「御免!」
玄関の長屋門で声がした。
「なんだ、てめえらは?」
平隊士たちに稽古をつけていた新八の声が応じている。
「伏見奉行所の者だ。局長の近藤どのはおられるか?」
私が顔を出すと、笠を被った武士二人が新八と対峙していた。
「奉行所だかなんだか知らねえが、いきなり『局長を出せ!』とは、どういう了見だよ?」
がなりたてる新八に、若い役人が十手を突きつける。
「我らはお上のご用で参った!さっさと、近藤どのにとりつげ」
「なんだと!このやろう〜っ」
一触即発の雰囲気だ。私は慌てて、割って入った。
「お待ちください。私は近藤の娘で、すみれと申します。父は他出しておりますゆえ、留守居の副長・土方歳三に取り次ぎをして参ります」
「丁重な対応、痛み入る」
年のいった役人が進み出た。
「我らは原田左之助どのに尋ねたい義があって参った。よろしく頼む」
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