この作品は18歳未満閲覧禁止です
![](/image/skin/separater44.gif)
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
狼に囚われた姫君の閨房録
第29章 近藤勇、狙撃
![](/image/mobi/1px_nocolor.gif)
慶応三年十二月十八日。
蒼白い月が浮かび、夜風が柔らかい宵であった。
戦が近くなり、新選組は伏見奉行所に陣を移していた。
私は厨房で寄せ鍋を作っている。
二条城の会議に赴く前に、父はこう言った。
「今夜は熱い鍋がいいな。お偉方との合議は肩が凝ってならん」
疲れて帰営する父に、少しでも美味しいものを食べさせたい。私は張り切った。
鰹節で出汁を取り、白菜、豆腐、こんにゃく、ネギを醤油で煮込む。
(練り物も入れようかな?)
私がお鍋を用意したと知ったら、きっと父は喜んでくれるだろう。喜ぶ顔を早く見たい。
そこへ、ドタドタと走り回る音がした。怒声にも似た叫び声もする。
「二番組、集合!俺に続け!!」
これは新八の声か?
「やったのは、伊東派の残党だ。皆殺しにしてやれ!」
歳三の大声が続いた。何かあったのだ。
私が割烹着のまま厨房を出ると、左之助と鉢合わせした。
「親父さんが銃で撃たれた!」
「えっ!?」
「今、松本先生が治療してる!急所は外れているが、やばいかもしれねえ」
「そんな……」
ぐらりと私の体が揺れる。
「しっかりしろ」
私の両肩を左之助はガッチリと抱えた。
「親父さんは昏睡状態だが、顔は見れる。行くか?」
小刻みに震えながら、私は頷いた。左之助は私の肩を抱き、父の病間に連れて行ってくれた。
蒼白い月が浮かび、夜風が柔らかい宵であった。
戦が近くなり、新選組は伏見奉行所に陣を移していた。
私は厨房で寄せ鍋を作っている。
二条城の会議に赴く前に、父はこう言った。
「今夜は熱い鍋がいいな。お偉方との合議は肩が凝ってならん」
疲れて帰営する父に、少しでも美味しいものを食べさせたい。私は張り切った。
鰹節で出汁を取り、白菜、豆腐、こんにゃく、ネギを醤油で煮込む。
(練り物も入れようかな?)
私がお鍋を用意したと知ったら、きっと父は喜んでくれるだろう。喜ぶ顔を早く見たい。
そこへ、ドタドタと走り回る音がした。怒声にも似た叫び声もする。
「二番組、集合!俺に続け!!」
これは新八の声か?
「やったのは、伊東派の残党だ。皆殺しにしてやれ!」
歳三の大声が続いた。何かあったのだ。
私が割烹着のまま厨房を出ると、左之助と鉢合わせした。
「親父さんが銃で撃たれた!」
「えっ!?」
「今、松本先生が治療してる!急所は外れているが、やばいかもしれねえ」
「そんな……」
ぐらりと私の体が揺れる。
「しっかりしろ」
私の両肩を左之助はガッチリと抱えた。
「親父さんは昏睡状態だが、顔は見れる。行くか?」
小刻みに震えながら、私は頷いた。左之助は私の肩を抱き、父の病間に連れて行ってくれた。
![](/image/skin/separater44.gif)
![](/image/skin/separater44.gif)